その2後編|地域を記録するオンライン対談「本をつくる=地域を記録する」

メディアを選ぶ

▼事務局

ありがとうございます。
お二人のお話がそれぞれすごく内容が濃かったのですが、お二人からそれぞれさらにおっしゃりたいことはありますか?

▼明貫さん

さっきも言いましたが、「私もやっぱり本にしたいな」と思いました。(笑)

私は今のところ上映会とかイベントの形でやることが多いので、どうしても「流れていってしまう」というようなところがあります。
本に近い性質のものとしては前回お話ししたZineがあるのですが、あれは割と評判が良くて、ずうっと長く一定の人気があって少しづつ売れていっています。
そういう体験もあるので、「本」にはすごくメディアとしての強さがあるなと感じています。

それから私は自分が研究者だからというのもあると思うのですが、タケムラさんのお話の中に出てきた「自由研究」という言い方はすごくいいなと思いました。
体系立てられたアカデミックな「研究」がある一方で、シビックサイエンスの文脈や個人的なことなどを含む「自由研究」には意味を感じます。特に「地域」ではそれは重要ですね。
それを、「本」などはっきりした形でアウトプットすることには可能性を感じます。

個人的な自由研究がまとまった、スモール・パブリッシュのフェアみたいなものがあったら、楽しいだろうな、と。

▼タケムラさん

自由研究は「アオサバラボ」で出てきた言葉なのですが、ある地域をターゲットにした「本」をつくるということは、イコール自由研究的なものであるような気がしています。地域のことを本にしようとする意気込み自体に、研究者的な勢いがあるし、そもそも頼まれてもいないことを本にしようと思う段階で自由研究感があるというか。(笑)

フェアですが、たとえば路地とか街並みとか路上観察的なテーマのZineは最近は多くなっていて、その手のマニアックな本ばかり置いた店があったり、コミケ的なイベントで販売もされているようですね。

▼明貫さん

それで私はいつも悩んでしまうのですが、タケムラさんも本を作りながら一方でInstagramをやられたりしていると思いますが、地域で活動していて資金も人手もない私たちがどんなメディアを、どのように扱っていけば良いのかは、すごく考えてしまいます。

タケムラさんはその辺りいかがですか?

▼タケムラさん

「本」は、やっぱり固定化する仕事というか、後の時代に残すための活動というふうに捉えています。
SNSはお手軽に発信はできるけど記録にはならないですよね。
SNSだと「流れていく」ばかりで、その一瞬は情報が広がるけれど、5年後には残ってないかもしれない。
だけど、本ならば、例えば2,000部出したら2,000部が「世の中のどこかにはある」という状態にできる。まあその多くは本棚の肥やしかも知れないけれど、SNSの奥深くに仕舞われてしまうよりは意味があるような気がして。

▼明貫さん

そうですよね。
やっぱり、本にしよっと。(笑)

▼タケムラさん

一方で、映像とかでやれば本とは違う人たちに違うやり方でアプローチできるわけで、その良さはもちろんあるのだなということを明貫さんの活動を見ていて改めて思いますよね。

▼明貫さん

例えばイベントの形でやれば、お客さんの反応をダイレクトに知ることができるという良さはありますね。

▼タケムラさん

ですよね。
本の場合は、「面白かったよ」というような反応を得られるのはすごく時間がたった後だったり、人伝に間接的に聞いたりするということが多いので。

▼タケムラさん

明貫さんは、活動範囲を広げていくというお考えはないのですか?
いまは加賀が中心だと思うのですが、石川県全体に広げるとか、隣の福井県とか。

▼明貫さん

あります。

例えば「温泉」というキーワードで言うと、近隣にも他にもたくさん温泉郷があって協力し合えば色々できることがあるはずなのですが、なかなかうまくいっていないところがあります。
私たちがそこを横断して活動することで、つなぎ合わせることができる可能性はあると思っています。

地域の文化を、地域で育てる

▼事務局

では最後に一つ質問をさせてください。

質問は、「地域の記録やアーカイブの活動を、地域外の人が来て行う」ということについてです。
タケムラさん明貫さんとも、それぞれご自身がお住まいの地域を記録することもあれば、それ以外の地域のことをやられることもあるということを今日お聞きしました。
また、例えばこの「文化庁メディア芸術祭高知展」を実施している私たち事務局は高知の地域の外の人間です。
そのことについて、感じておられることがあれば教えてください。

▼タケムラさん

うーん。
別にいいんじゃないですかね。(笑)

▼明貫さん

私もそう思います。(笑)
資料整理の観点から見ると、「知りすぎているとうまくいかない」というところがあります。

▼事務局

どういうことですか?

▼明貫さん

地域のことに限りませんが、「資料」に対しては、その分野のことや経緯のことを深く知り過ぎてしまうと、「平等な目で見られなくなる」というところがあります。
特定の事柄に対して強い思い入れを持ってしまって、そこだけ重要視してしまったりとか。それは、資料整理にあたる態度としては問題があります。
例えば、写真資料があったとしたら、その中でフォトジェニックな写真とか美しい写真だけを重視してはだめで、一見何が写っているのか分からないような写真にも注目する必要があります。資料編成の基本的な立場は色々な可能性を未来に残すことなので、パッと見て価値の評価や判断をしてしまってはだめなんです。そもそも、アーキビストは資料に対して価値をつけない、という立場ではありますが。

その意味では、ある分野の資料についてその分野の専門家以外の人が資料を見ることには意味があって、地域のことに置き換えて考えると、地域外の人が地域のことを見ることにも意味があると思います。

▼事務局

なるほど。

▼明貫さん

一方で、外部の人が地域にやってきて活動する場合に問題だと思うことも確かにあります。

文化的な面で言うと、東京などの中央でやられていること、例えば展覧会などを取り上げて「これは中央でやったやつだから、地方でも面白いはずだ」といった形で押し付けるというようなやり方のことです。
マーチャンダイズ的なやり方というか。
そういうやり方は、文化的な面についてはうまくいかないと思います。

例えば各地で開催されている地方芸術祭では、どこのフェスティバルに行っても見かける中央のアーティストがいるという状況は、実際にあります。
それはそのアーティストが悪いということではなくて、文化や政治の中で「中央で評価されたものを地方に広げよう」みたいな上から目線な考えが広く深く染み込んでしまっていると思います。
逆に、地方も中央へのあこがれがあって、地方の人たちは地元になにもないと思い込み、中央で流行っているものをありがたく思ったり、東京で働いているというだけで無条件にすごいと思ってしまう傾向もあると思います。

地域には地域で活動したり縁のあるアーティストやキュレーターがいるはずで、地域の文化や特色はその中から出てくると思います。それは単に地元作家びいきにしろという意味ではなく、ていねいな文脈の編集作業や紹介方法の工夫次第なのだと思います。私も、都会や海外で見たトップアーティストの作品を加賀でどうやって紹介すると面白いか、ということも日々妄想しています。
私はそういう中で活動したいし、仮に、そういうものを高いレベルに引き上げるようなことが地域の人たちだけでは難しいという状況があるのなら、そういう人材も育てるという選択肢もあると思います。
でないと、文化や芸術の面でも地方の駅前や国道のように画一的で面白みのない風景になってしまいそう。

タケムラさん

地方芸術祭的なものは、正直どうかという感じがしています。
もはやパッケージ的になっていて、似たような作家さんを似たようなキュレーターが似たようなキュレーションしているイメージしかなくて、たまに見に行っても私はややうんざりしてしまいます。 荒削りであったとして地域の作家、地域のキュレーターから巻き起こるようなものの方が私は見たいです。

▼明貫さん

そういう意味では、「文化庁メディア芸術祭地方展」には期待している部分もあって、地域の人や文化を見つけたり育てたりするような機能をもっと持ってくれたら素敵だなと思います。
文化庁は「文化」を管轄する機関だと思うので、そこについてはリーダーシップを発揮してほしいです。

▼タケムラさん

少なくとも高知にいると、「文化庁」を感じることはあまりないです。(笑)
現場を担う博物館や美術館の学芸員さんや行政の向こう側にある感じで、現場感がないというか。

▼明貫さん

今回のトークは高知のタケムラさんと加賀の私が話すというしつらえですが、こういうものを企画してくれるのは面白いなと思います。
こういう試みがもっと大きな枠組みや政策の中で実行されていくようになったら、いいですよね。

▼事務局

なるほど。
明貫さんの問題意識がすごくよくわかりました。
ありがとうございます。

タケムラさんも、お考えを聞かせてくださってありがとうございます。

思いがけず大きな話にもなってしまいましたが、今回はここまでにしようと思います。

▼明貫さん

ありがとうございました。

▼タケムラさん

ありがとうございました。

[※前編はこちらのリンクからお読みいただけます。]

——–

今回のオンライン対談にも登場した、アニメーション作家・山村浩二さんの短編アニメーション作品『サティの「パラード」』や、高知出身の植物分類学者・牧野富太郎博士の植物図(展示協力:高知県立牧野植物園)は、メ芸高知展にて展示予定です。
近圏の方は、ぜひ会場でもお楽しみください。