その2前編|地域を記録するオンライン対談「映像ワークショップと地域とわたし」

映像ワークショップと地域

▼明貫さん

それで、「映像ワークショップと地域」の話ですね。
地域に密着したプロジェクトとしては、今は4つあります。

  1. コミュニティ・アーカイブ
  2. コミュニティZine(ジン)
  3. ワークショップ
  4. 映像上映会

の4つです。

映像ワークショップのWebサイトが、こんな感じです。
今は、金沢でやっているマルシェイベントに出店した時の模様を置いています。
マルシェイベントに映像を出店させてもらったというのは、初めてでした。

▼タケムラさん

「映像を出店」というのは、どういうことですか?

▼明貫さん

そうですよね。(笑)
イベントの方でテントを作ってくださって、そこで上映をやりました。
インスタグラムに少し写真をアップしていて、こういう感じですね。
後ろに見えている建物は、国立工芸館です。

▼事務局

なるほど。
「見せ物小屋」みたいな感じでしょうか?

▼明貫さん

そうそう。
なんていうか、ちょっと怪しくて。
通りかかる方には「占いやってるんですか?」なんて聞かれました。

この中で、山村浩二さんのアニメーション作品を上映しました。
「妄想旅行」というテーマで、全部で4作品2作品づつのプログラムに分けて、1プログラムにつき500円で入場できるようにしました。
1プログラムが大体20分くらいでした。

この時は「映像を見ることを目的に来たお客さん」ではなくて、マルシェに来て、あくまでも美味しいものを食べたり買い物をしたいお客さんに向けてこういうことをやったのが私たちにとってはチャレンジでした。
周りのイベントの音なんかも入ってきたりして上映環境も完璧とは言えないわけなんですが、状況が面白いというのもあって、山村さんも関心を持ってくださいました。

▼事務局

ちなみに、この中にも映っている『サティのパラード』という作品は、文化庁メディア芸術祭高知展でも上映する予定です。

▼明貫さん

あ。
そうなんですね!

▼明貫さん

私たちはこういう上映会イベントのプロジェクトを「PoPuP Screen(ポップアップスクリーン)」と呼んでいます。
今、映画を観るという経験は「個人で観るもの」というふうになっていると思います。コロナが来てからは特にそうですね。
その中であえて「みんなで観る」時間とか、観た後に話したり感想を言い合ったりすることを大事にしています。
それを「新しいお茶の間」と呼んで、上映会を行っています。

この「PoPuP Screen」の最新回がこのテントスクリーンでの山村さんの作品上映だったわけですが、その第一回目は、35ミリフィルムを加賀市の図書館で上映しました。
アピチャッポン・ウィーラセタクンの『真昼の不思議な物体』という映画を上映しました。
この作品はある種のドキュメンタリーなのですが、地域の人たちの話を聞きながらリレー形式で物語を紡いでいくというような作り方になっています。
パートナーの木村が地域の方達に観てもらうならぜひこれを上映したいということで、この作品を選びました。

この作品を「35ミリフィルム」で上映したというところが一つのミソで、実はこの作品の日本語版というのが、35ミリフィルムでしか存在しなかったんです。
フィルムを借りられることは分かったのですが、映写機がありませんでした。加賀には映画館がないので。
それでも探して探して、「みに・キネマ加賀」という団体がポータブルタイプのものをお持ちだということがわかって、それをお借りして映写技師の方にも協力いただいて、無事に実施することができました。
イベント後にこの映写機は譲っていただきました。なので、私たちは35ミリフィルムも上映できるようになったんです。
その意味でも思い出深い催しでした。

これが元で取材していただいたり活動が広がるきっかけになりまして、加賀市内の上映会だけではなく、奥能登や金沢、東京などでも上映プログラムの企画をできるようになっていきました。
ただ、そのあたりでコロナが来て、しばらく上映会を開催できない空白期間ができたりしてしまいました。

▼タケムラさん

コロナが来るまではかなり頻繁にやっていたんですか?

▼明貫さん

そうですね。
そのころはドイツから加賀に来たばかりで時間があったので、かなりの数をやっていましたね。
最近は少しコロナも落ち着いてきたので、徐々に再開しています。

▼明貫さん

それから地域アーカイブの活動として、「モモモモンタージュ」というプロジェクトをやっています。

このプロジェクトの中では、「郷土資料」という言い方をしているのですが、個人の方がお持ちの写真やアルバムですとか、8ミリフィルムなんかをお借りしてデジタル化して、データベース化して公開するというところを目指しています。

今、特に力を入れているのは、大土町という場所のアーカイブです。
ここは加賀市の中でもかなり山深いところにあるのですが「伝統的建造物群保存地区」に指定されていまして、過疎化はどんどん進むのですが、建物や街並みは保存されるという不思議な状況にあります。
住んでいる方というのは、一人だけなんです。
このページに、古い写真を載せています。
ここに写っている学校なんかはもう存在しないのですが、アルバムが見つかったのでそれを保存したりしています。

一方で「関係人口」というか、住んでいるわけではないのだけれど通ってきている方とか、関心を持って関わってくれる学生の方とか外国人の方がいて、田んぼを復活させたりといったことが行われています。
里山体験で滞在される方とか、私たちのように住まいは加賀市内にあるけどここでプロジェクトを行なっていというような人も含めると関係している人口は結構いるんです。
「住まなくても維持できる場所やコミュニティ」というようなことを考えたり実験したりできるという点で、面白いなと感じています。

これは文化事業としてやっているので、助成金をもらってやっています。
いしかわ里山振興ファンドとか福武財団の「アートによる地域振興助成」とか。

「モモモモンタージュ × PoPuP Screen」として、収集した地域資料の上映会というのもやっています。
大土町で見つかった古い小学校の学芸会の写真をデジタル化して上映したり、それと関連づけてマイク・ケリー監督の「DAY IS DONE」という、古い写真をモチーフにして制作された映像作品を上映したり。

こういう形で地域資料を収集して整理するだけではなくて、それを手がかりに未来のことを考えたり、創造活動につなげるようなことをやっていきたいです。
マイク・ケリーは現代美術の世界ではとても有名なアーティストなわけですが、それを地域の文脈に沿って地域の一般の方に向けて上映するというのも、チャレンジの一部ですね。

▼明貫さん

「EXOTIC FUTURE(エキゾチックフューチャー)」という、高校生向けの映像制作ワークショップもやっています。

今まで3回実施していて、「火星シミュレーション」「99秒のユートピア」「フェイクニュースかな〜」など毎回独特なテーマを設定しています。
1泊2日でみんなで泊まって、プロットづくり、撮影をやって、そのあと1〜2週間かけて編集するというやり方です。最後には上映会をやって、フィードバックをもらうという流れです。

▼タケムラさん

これは、加賀でやったんですか?

▼明貫さん

そうです。
加賀と、それから隣の小松市に「TAKIGAHARA FARM(滝ヶ原ファーム)」という超オシャレ施設があるので、そこに泊まって、そこのスタッフの方にも協力してもらいました。

大雪の中でやったりしたんです。
こんな感じ。

▼事務局

そうか。
石川県の雪はすごいですもんね。

▼明貫さん

最後の上映会には私は講評役として出るのですが、手加減せず!という感じで講評しています。

▼事務局

明貫さんの講評は、厳しそうですね。(笑)

▼明貫さん

最後に「片山津温泉ファンZine イグアノドン」というプロジェクトを紹介します。

▼タケムラさん

これが一番、「なんだろう?」と思っていました!

▼明貫さん

これは、Zine(ミニコミ誌)ですね。
「芸術と科学、そして温泉文化」というテーマでやっています。
私の研究者としての専門領域はメディアアートなわけですがその中のキーワードとして「アート&サイエンス」「アート&テクノロジー」というのがあるので、そこから派生してこのテーマを決めました。

加賀市は温泉郷なのでいくつか温泉があるのですが、中でもこの片山津温泉というところは雪の結晶を人口的に作ることに初めて成功した「雪の科学者」として知られる中谷宇吉郎の出生地なんです。
それから中谷宇吉郎の次女の中谷芙二子さんという方が「霧の彫刻」で世界的に知られる彫刻家なんです。この方はヴィデオ・アートの作品も作られていたりして、メディアアート史の中で重要人物なんです。

そういう縁もあったりして中谷宇吉郎にちなみつつ、温泉文化というようなところにも注目して作りました。

▼タケムラさん

これ、買います!!

▼明貫さん

ぜひ!
リソグラフというすごく美しい印刷技術でイグアノドンを印刷してくれている石引パブリックという本屋さん兼印刷屋さんがあって、そこのWebサイトで買うことができます
石引パブリックにはデザインもやってもらっています。

イグアノドンはこれまで3号まで出ています。

創刊号は中谷宇吉郎のことを特集していて、イグアノドンの誌名の由来でもある中谷宇吉郎の「イグアノドンの唄」という随筆のことなどを書いています。
裏面には中谷宇吉郎自身が描いた雪の結晶のスケッチと分類図になっています。

▼明貫さん

第二号は、中谷宇吉郎の弟の中谷治宇二郎という人を特集しています。
治宇二郎も学者で、考古学者でした。
治宇二郎自身の描いた土偶のスケッチなどを掲載しています。
彼は絵も文章も上手くて、論文がまるで文学作品のようだったりします。
裏面には彼の手による「石匙(いしさじ)」という石器の分類図を載せました。

▼事務局

宇吉郎と治宇二郎は、兄弟でなんだかやり方が似ていますね。

▼タケムラさん

そうですね。
考現学っぽいというか。

▼明貫さん

そうなんです。
たぶんお互いに影響を受け合っていたと思います。

▼明貫さん

それで、第3号はさっきも言った宇吉郎の次女の中谷芙二子さんです。
彼女の映像作品である『卵の静力学』という作品をグラフィック化したものを載せています。

こんなふうに毎号特集を組みつつ、もちろん温泉地のことにも触れながら毎回編集しています。

▼タケムラさん

編集は明貫さんが?

▼明貫さん

そうです。
紙面に入りきらなかった話は「イグアノドン オンライン」としてウェブ上で読めるようにしてあります。

▼明貫さん

「モモモモンタージュ」からつながる郷土資料アーカイブの活動として、今年度から「カガがアーカイブ」というのをはじめました。
これまでの私たちの活動はさっき出てきた大土町など特定の場所に注目していたのですが、こちらは加賀市立図書館と連携して加賀市全域をターゲットにしようという計画です。

地域おこし協力隊の方をお二人スタッフとして受け入れて、今まさに始まったところです。
いま「カガが」という呼び方をしましたがこれは仮で、まだ正式名称も決まっていない新プロジェクトです。

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